リーグ第12節vs名古屋戦 3度目の「風間ダービー」90分間一瞬も目の離せない展開に

フロサポが絶対に負けたくない相手「風間グランパス」

風間監督がフロンターレを離れグランパスの指揮を取り始めて3年目。
J2だった1年目から「ボールを保持して主導権を握る」風間流サッカーを植え付けるべく種を蒔き、J1昇格を成し遂げたあともメンバーチェンジを繰り返しながら、その精度に磨きを掛け続けている。
名古屋グランパスは川崎フロンターレにとっていわば、同じ理想のサッカーを志す同一流派の弟弟子のようなものだ。だからこそフロンターレサポーターにしてみれば絶対に負けたくない相手なのだ。多摩川クラシコで毎年しのぎを削るFC東京よりもだ。

結果ドローもチームの完成度はグランパスのほうが高かった

昨シーズンの対戦は2戦2勝。フロンターレが差を見せつけ勝った。
風間監督が「目に見えないものに怯えている」と表現した通り、グランパスの選手はどこか自信を持てずにプレイしているようだった。「まだまだ完成度が違う」というのが当時の印象だ。
ところが今節である。
自信を手に入れたグランパスに昨年のような迷いは微塵も感じられなかった。
センターバックはラインをギリギリまで上げ、浅い守備陣形を保っていた。常に背後にスペースを作ることを恐れない戦術は、この試合に対する強い気持ちを印象づける。この陣形を成立させるにはシュミッチ、米本のダブルボランチの素早い守備が不可欠。フロンターレの裏を狙ったパスは何本かこの二人に阻止されていた。そして決定的な仕事が出来る前線のブラジル人トリオにボールを供給する。
90分を通して選手一人ひとりが自分のやるべきことを明確に理解し、チーム全体が連動していたのはグランパスだったように思う。

各ポジションのマッチアップが好ゲームを演出

両サイドバックが高い位置を取りコンパクトな陣形を維持する両チームの攻防は、フィールドプレイヤー20人がグラウンドの1/4ほどのスペースでプレイする展開が続く。テレビ画面にフィールドプレイヤー全員が収まり映り続けるゲームも珍しいと思う。
狭いエリアでの攻防は選手の技術、そしてチームの完成度が要求される。ちょっとしたタッチミス、判断の遅れが途端に大きなピンチを招く戦況で、選手の緊張感が観ているコチラにもヒシヒシと伝わってくる。
相手のプレッシャーの外し合い。攻守の切り替えの速さ。駆け引き。
ミラーゲームであるがゆえに各ポジションで激しく繰り返されるマッチアップに、一瞬も目を離せない展開はいわゆる「ずっと観てられる試合」だった。

1-1のドローで決着した今節。結局相手の守備を崩した得点は両チームともに生まれなかった。しかし試合終了と同時に起こった両サポーターからの拍手はこのゲームがいかに見ごたえのあるエンターテイメントだったかを証明した。



リーグ第11節vs清水戦 選手層の厚さが10年ぶりの5連勝を引き寄せた。

開幕から怪我人が出たり入ったりで、毎試合スタメンが変わるチーム状況の中、日本平で0−4の完封勝利を収めたフロンターレ。
前線からプレスを掛けペースを握ろうとするエスパルスになかなかリズムが掴めない前半だったが、セットプレーとカウンターで2得点を取る。
後半もディフェンスラインがズルズルと下がり高い位置を保てないままの展開が続いたが、大島のスーパーミドルが決まると余裕が出たのかパスが回り始める。終了間際のダメ押し弾で試合を締めくくった。

「中央を崩す」為の起点 脇坂泰斗

フロンターレユース出身の大卒2年目。同期入団の守田に大きく溝を開られていたが、前節初スタメンで2アシストと存在感を示した。
川崎のバンディエラ中村憲剛に「ハイスペックな潤滑油」と評される通り、動きながら敵陣の間に顔を出し、コンビネーションで味方を活かすプレーが脇坂の武器だ。
今節も様々な場面でパスを引き出し、前線へと繋ぐプレーを連発。セットプレーのキッカーも任され先制点の起点にもなった。本人は得意ではないというヘディングで奪った2点目はパスだけでなく自ら得点できることも証明した。三好・板倉・田中碧などユース出身の後輩が活躍する中、負けずにアピールし続けてほしい。

強靭な肉体で相手の攻撃を跳ね返す ジェジエウ

両サイドバックが高い位置を取り攻撃に参加するフロンターレにおいて、2センターバックはチームの生命線。フロンターレの連覇は2センターバックの安定なくしてあり得なかった。その一翼を担っていた奈良が長期離脱したのは大きな打撃だった。空いたセンターバックを埋めるべく抜擢されたのが今年新加入のジェジエウだ。
前節仙台戦でデビューし、能力の高さはアピールしていたが、今節最大の脅威だった相手FWドウグラスを完全に封じたとんでもないフィジカルに胸の高鳴りを感じたサポーターは多かったはず。相手に裏を取られてもカバーできるスピード。空中戦を完全に掌握するジャンプ力。大柄の相手にも負けない身体の強さ。
言葉の壁や新しい環境への順応で時間は要したが、とんでもないポテンシャルを秘めた選手が入団していたことに改めてフロントのマネージメント能力の高さを確信させられた。前半決定的なミスもあり安定感は今後の課題だが、谷口とも良好な関係が築けているようなので少しずつ良くなることに期待したい。ジェジエウに安定感が備われば鬼に金棒だ。

終了間際の大花火は今節のベストゴール

第3節のマリノス戦以降、リーグ戦のスタメンから外れていたレアンドロ・ダミアン。今節も正直チームにフィットしているとは言い難い状態だった。
元来、裏にスペースを見付けタイミングよく飛び出すような選手ではなく、フィジカルの強さを活かしたプレーを得意とする選手。2点目のきっかけとなったセンターラインから敵陣ペナルティーエリアへの独走はまさに彼の持ち味が出た場面だ。そして試合終了間際のスーパーゴール。
なかなか試合に出られない現状で「俺はこういうセンターフォワードだ!」という彼の強い主張だったのかもしれない。今後鬼木監督の采配が楽しみだ。



この試合を終え清水のヤンヨンソン監督が解任された。
エスパルスの攻撃にはバリエーションがあまりなく、90分通して失点する気は正直しなかった。しかし次節はそうはいかない。好調の風間グランパスとの対戦でフロンターレの真価がわかる。6連勝に期待したい。

リーグ第7節vs鳥栖戦 前半と後半で全く違う展開に。きっかけは知念慶の先制点

勝ちきれない試合が続くフロンターレ。主力の怪我が相次ぐ中、川崎の10番が帰ってきた。復帰戦の相手は6試合で1得点と決定力不足に悩む鳥栖。

知念慶の先制点がチームのリズムを完全に変えた。

前半は鳥栖のリズムだった。高い位置から掛けられたプレスがハマっていた。本来前掛かりに来る相手を剥がしながらパスを繋ぎリズムを作るのがフロンターレのサッカーである。自陣に退かれてブロックを作られ、カンターを狙われる戦術よりもやり易いはずなのだが、今日はパスが上手く繋がらず、一向にリズムが上がらない。クエンカ、原川、金崎の鳥栖攻撃陣はここまでリーグ1得点が不思議なほど脅威だった。

流れが変わったのは後半6分。リーグ連続得点中の知念慶が、自陣からのパスを相手DFを抑え見事なトラップ。フリーの状態で右足を振り抜き豪快にゴールに突き刺す。この先制点でリズムを掴んだフロンターレ。余裕ができたのか、前半全く繋がらなかったパスが繋がりだす。

怪我人続出の中、アウェーで勝ち点3を奪取できたのは評価できるが、1試合を通してもう少し安定したパフォーマンスを期待したい。

格が違う大島僚太。攻守に絶大な存在感

チームの骨格である谷口、憲剛、守田が怪我で出場できない中、この試合から復帰したのが大島僚太。先制点は彼の自陣深くからポーンと挙げたパスから生まれた。
終始試合の流れを意識しながら、得点チャンスにつながるスポットを見つけ、正確無比なパスを供給し続ける戦術眼と技術力。相手の攻撃の芽を摘むボール奪取能力。改めて代えの利かない選手であることを再確認させられた。

俯瞰でみている視聴者が「えっ! そこに出すの?」と驚くようなパスをいとも簡単に通し、チャンスメイクする姿は10数年前に中村憲剛に感じたワクワク感を思い出させてくれる。

彼が日本代表で攻撃のタクトを振るう姿が見れることを切に願うが、まずはここからフロンターレを勢いづかせ、そして怪我なくシーズンを終えてほしい。

早くも総力戦が続くフロンターレ。まずは次節ホーム湘南戦での初勝利を期待したい。

リーグ第5節で初勝利! vs松本山雅戦で奮起したのはフロンターレのバックアッパー3選手

例年以上のスロースタートにモヤモヤが募るリーグ戦。第4節を終えた時点で未勝利は記憶にない。新加入選手が中々フィットせずスタメンに怪我人がいる中で、頭角を表したのは当初バックアッパーだった3選手。

チームの心臓として試合ごとに成長する 田中碧

不動のボランチ大島が怪我で離脱する中、前節のG大阪戦に続いてスタメンを努めたのはユース出身の田中碧。

ボランチというポジションの重要性は言わずもがなだが、川崎のポゼッションサッカーにおいてはボランチの出来がチームの勝敗に直結すると言っても過言ではない。一試合におけるパス本数の多さがそれを証明している。

昨シーズンから加入しているカイオセザールや下田北斗、経験豊富な山村和也を差し置いて、弱冠20歳の選手を起用した監督の采配も素晴らしいのだが、その期待に難なく応える田中碧には感服した。冷静沈着に相手をいなし、かつ大胆不敵な縦パスと突破を披露する彼からは、雰囲気にのまれ無難なプレーでやり過ごす様子は一切見て取れなかった。毎試合ごとに確信を得ながら成長している姿が頼もしく、フロンターレの将来を担う選手になる期待は大きい。
前半の最後。右サイドに流れ、中央の家長に出したクロスのような決定的な仕事がもっと多く見れるようになれば、五輪代表選出もあるのかも。

判断力と適応力はさすがのユーティリティプレイヤー 鈴木雄斗

開幕当初右サイドバックはマギーニョと馬渡和彰で争われると思っていた。本来攻撃的なMFである鈴木雄斗が前節に続きこのポジションのスタメンを務めなければならない事態はチームとしてはあまり望ましいことではない。しかし今節右サイドを崩されることがほぼなかったことは偏に、彼の能力の高さによるところが大きい。

恵まれた体格と元々優れた技術は持っていたが、フロンターレの選手層の厚さで中々出場機会を与えられなかった。望んだポジションでのチャンスではないのかもしれないが、自分を変化させることを拒否せず可能性を模索する姿は、2017年まで在籍していた井川祐輔を思い出す。彼も攻撃的なポジションからセンターバックにコンバートされ川崎でスタメンを勝ち取った。
経験と自信を得て右サイドを切り裂く鈴木雄斗を楽しみにしたい。

点を取り始めた3人めのセンターフォワード 知念慶

今節のMOMは知念慶だったと思う。
センターFWもレアンドロ・ダミアンと小林悠に続く第3の選手とされていた彼がスタメン奪取を強烈にアピールした。元々ポストプレーに関しては光るものがあったのだが、今節は自らチャンスを作り出し得点を奪う“力強さ”が伝わってきた。

素晴らしかったのは2点目のきっかけとなるシーン。身体を上手く入れスペースに抜け出すと、1対1の勝負を挑み敵陣を押し込んだ。結果シュートは阻まれたが、ストライカーとしての片鱗が垣間見れた。沖縄出身のフォワードといえば我那覇和樹が思い出されるが、彼のように日本代表まで昇りつめてほしい。

今節リーグ戦初勝利とバックアッパーの活躍は喜ばしい限りだが、それは、チームとしての完成度、個々の能力においてだいぶ実力差のあった松本山雅が相手だったから。真価が問われるのは次節以降連勝できるかどうかだ。

2019年シーズン開幕!
富士ゼロックス vs浦和レッズ戦で感じたダミアンの存在感と三連覇の可能性!

今年のJシーズン開幕を知らせる頂上決戦。
富士ゼロックスを川崎が初制覇。スタートダッシュに成功した。

敵地での一発勝負で勝利できたことに成長を感じた

シルバーコレクターと揶揄された川崎フロンターレが、初のタイトルを取ったのが2年前の2017リーグ優勝。昨年はACLこそ1勝もできずに敗退したが、リーグ二連覇、ベストイレブン7名、そしてチームから三年連続MVP獲得選手輩出と今まさに黄金期をむかえている。
そして今年は一発勝負のカップ戦初タイトルを目指し、ターンオーバーができるほどの補強を行った。一発勝負にことごとく負け続けたフロンターレが、二連覇を経験して今までとは違う、常勝チームに成長したと思える勝利だった。

昨年度MVP家長。30歳を過ぎていよいよ脂がのってきた

ゲームは前半からフロンターレがいつものようにボールを支配する展開。中でも存在感を見せつけていたのが家長昭博だ。
マッチアップする浦和DFをあざ笑うかのような、独特の間合いと身体の使い方で絶対にボールを奪わせない技術は、次元の違いを感じざるを得ない。元々凄い選手だったがフロンターレに来てその才能が更に引き出されているように思う。数年前フロンターレに来て爆発した大久保のように、彼にはそのキープ力でフロンターレの「時間」を作り出し、チームを勝利に導いてほしい。

エウシーニュの穴を埋める右サイドバックの二人

入団当初からフロンターレに欠くことができない選手となったエウシーニュが、契約更新をしないと聞いたときはかなりショックだった。
今シーズンの補強の最重要項目は右サイドバックだということは、フロンターレサポーター全員が感じていたことだと思うし、同時に一番評価が辛口になるポジションでもある。僕自身もこの試合一番注目していたのが先発のマギーニョだ。デビュー戦であれだけのプレーができるのはさすがだとは思ったが、やはりまだボールを預けて裏に抜けるシーンが少なかったように感じた。前に仕掛ける姿勢は見て取れたが、これからコンビネーションが上がっていくことに期待したい。個人的には交代で入った馬渡のほうがフロンターレにはあっているのではないかと思っている。徳島時代からいい選手だなーと思っていて、縦にも中にも切り込めるテクニックと速く正確なクロスを供給できる技術はJリーグでは貴重な存在だ。昨年サンフレッチェに獲られたときはヤラレタ!と思ったが翌年完全移籍で獲得するあたり、本人の強い上昇志向とフロントのこのポジションに対する本気度が伺える。

献身的な前線からの守備とポストプレーは大きな武器

そして決勝点を決めたのが、補強の目玉レアンドロ・ダミアンだ。
前半から積極的にプレスを掛け続ける姿に驚いたサポーターも多かったはずだ。僕もその一人で、このチームにいち早くフィットしたいという彼の熱意がひしひしと伝わってきた。
この試合、中盤の選手はダミアンをターゲットに攻撃を組み立てようと多くのパスを送っていたが、その殆どを高い位置でしっかり収めていたように思う。何度かタイミングが合わないスルーやフリックはあったが、時間をかけてすり合わせればもっと良くなるはずだ。また昨シーズンはほとんど見られなかった空中戦が多くみられるようになり、フロンターレの攻撃のバリエーションが一つ増えた。小林からのクロスを合わせネットを揺らしたプレーは、今シーズンの大量得点の期待を抱かせるに十分な迫力だった。惜しくもオフサイドにはなったが、あんなシーンと「フュージョン」をたくさん観せてくれることを期待したい。

今シーズンは昨シーズン以上に、引いて守備を固める相手から如何に得点を奪うかが課題になってくる。新戦力が時間と共に融合し、フロンターレらしい攻撃的な面白いサッカーを更にもうワンランクあげることを期待したい。Jリーグ三連覇とシーズン四冠を成し遂げフロンターレの黄金期に華を添えてもらいたい。